危険物乙4の物理・化学の要点|比熱・静電気・物質量の計算を例題で整理
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物理・化学は、乙4の3科目のうち「理科の基礎」にあたる科目です。範囲は中学・高校の理科と重なりますが、問われるのは、危険物の火災や事故を理解するのに必要な原理です。この記事では、状態変化と蒸気圧、熱、静電気、物質の種類、化学反応式と物質量、酸と塩基・酸化と還元の6つを順に整理し、計算が必要なところは自作の例題で手順を確かめます。燃焼と消火の理論は[燃焼と消火の記事](/guide/combustion-extinguish/)で別にまとめています。
この記事の要点
- 沸点は、液体の蒸気圧が外の圧力と等しくなる温度です。外の圧力が低いほど沸点は下がり、蒸気比重が1より大きい蒸気は低い所にたまります。
- 熱量は「質量×比熱×温度の変化」で求めます。静電気は、接地・加湿・流速を遅くすることで、発生と蓄積を抑えます。
- 化学反応式の係数は物質量(mol)の比を表します。酸化と還元は同時に起こり、酸化剤は相手を酸化して自分は還元されます。
物質の状態変化と蒸気圧
物質には、固体・液体・気体の3つの状態(三態)があります。温度や圧力が変わると、物質は別の状態へ移ります。このとき物質そのものは変わらないので、状態変化は 物理変化 です。
| 変化 | 向き | 熱の出入り | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| 融解 | 固体 → 液体 | 熱を吸収する | 氷が水になる |
| 凝固 | 液体 → 固体 | 熱を放出する | 水が氷になる |
| 蒸発(気化) | 液体 → 気体 | 熱を吸収する(蒸発熱) | ぬれた手が乾くと冷たく感じる |
| 凝縮(液化) | 気体 → 液体 | 熱を放出する | 冷たいコップの表面に水滴がつく |
| 昇華 | 固体 → 気体 | 熱を吸収する | ドライアイスが小さくなる |
固体が空気中の水分を吸って溶ける現象を潮解、結晶が結晶水を失って粉末状になる現象を風解といいます。
沸点は「蒸気圧=外の圧力」になる温度
液体の表面からは、常に分子が飛び出しています。密閉した容器で、飛び出す分子と戻る分子がつり合ったときの蒸気の圧力を 蒸気圧(飽和蒸気圧) といいます。蒸気圧は温度が高いほど大きくなります。蒸気圧が外の圧力(外圧)と等しくなると、液体の内部からも気化が起こります。これが沸騰で、そのときの温度が 沸点 です。
- 外圧が低いと、沸点は下がります(高い山の上では、水が100℃より低い温度で沸騰します)。外圧が高いと、沸点は上がります。
- 同じ温度で蒸気圧が大きい液体ほど、蒸発しやすく、沸点は低くなります。
- 純粋な液体では、沸騰している間は加えた熱が気化に使われるので、液体の温度は沸点のまま上がりません(ガソリンのような混合物は、沸騰しながら温度が上がっていきます)。
比重と蒸気比重
比重 は、ある物質の重さを、同じ体積の水(4℃)と比べた値です。比重が1より小さい液体は、水に溶けなければ水に浮きます。蒸気比重 は、蒸気の重さを同じ体積の空気と比べた値です。空気の平均の分子量は約29なので、分子量が29より大きい物質の蒸気は空気より重く、低い所にたまります。第4類の危険物の蒸気の多くが低所にたまりやすいのは、このためです(詳しくは第4類の性質の記事)。
熱:比熱と熱量・熱の移動・熱膨張
比熱と熱量の計算
比熱 は、物質1gの温度を1K(1℃)上げるのに必要な熱量です。単位は J/(g・K) です。比熱が大きい物質ほど、温まりにくく冷めにくい性質があります。物質全体の温度を1K上げるのに必要な熱量を 熱容量 といい、「質量×比熱」で求めます。物質に与える熱量 Q は、次の式で計算します。
- 例題: 比熱 2.0 J/(g・K) の液体 500 g を、15℃から45℃まで温めるのに必要な熱量は?
- 温度の変化は 45 − 15 = 30 K です。
- Q = 500 × 2.0 × 30 = 30,000 J。1 kJ = 1,000 J なので、答えは 30 kJ です。
- 逆に「この液体に 30 kJ を与えると何℃上がるか」と問われたら、Δt = Q ÷ (m × c) = 30,000 ÷ (500 × 2.0) = 30 K と式を変形します。
質量の単位が kg で書かれていたら、g に直してから計算します。単位をそろえることが、計算でいちばん間違えやすいところです。
熱の移動は3つ
| 移動のしかた | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 伝導 | 物質の中を、高温の部分から低温の部分へ熱が伝わる | 金属のスプーンの柄が熱くなる |
| 対流 | 温められた液体や気体が動いて、熱を運ぶ | 部屋の暖かい空気が上にたまる |
| 放射(ふく射) | 熱が電磁波として空間を伝わり、離れた物を温める | 日なたで体が温まる、たき火の正面が熱い |
熱の伝わりやすさを熱伝導率といいます。一般に金属は大きく、液体は小さく、気体はさらに小さい値です。
熱膨張と気体の法則
液体は温度が上がると体積が増えます。増える体積は「元の体積×体膨張率×温度の変化」です。例として、体膨張率が 1.0×10⁻³ /K の液体 1,000 L が 20℃ 温まると、1,000 × 0.001 × 20 = 20 L 増えます。容器いっぱいに液体を詰めると、温度が上がったときにあふれたり容器が壊れたりするおそれがあるので、容器には空間を残します。
気体では、ボイル・シャルルの法則(圧力×体積÷絶対温度が一定)を使います。絶対温度 T[K] は、セルシウス温度[℃]に273を足した値です。
- 例題: 27℃・1.0×10⁵ Pa で 3.0 L の気体を、127℃・2.0×10⁵ Pa にすると体積は?
- 絶対温度に直します。27 + 273 = 300 K、127 + 273 = 400 K。
- P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ より、V₂ = 3.0 × (1.0×10⁵ ÷ 2.0×10⁵) × (400 ÷ 300) = 3.0 × 0.5 × 4/3 = 2.0 L です。
静電気:発生・蓄積・火災の予防
2つの物質がこすれ合ったり、接触して離れたりすると、一方が正(+)に、他方が負(−)に帯電します。これが 静電気 です。たまった静電気が一気に放電すると火花が出て、周りに燃焼範囲の濃さの可燃性蒸気があると、点火源になります。第4類の危険物の多くは電気を通しにくい(電気の不良導体)ため、流したり、かき混ぜたりしたときに静電気がたまりやすい性質があります。
| 静電気が発生・蓄積しやすい条件 | 対策 |
|---|---|
| 電気を通しにくい物質(絶縁性が高い)ほど、たまった電気が逃げにくい | 設備や容器を接地(アース)して、電気を大地へ逃がす |
| 液体を配管で速く流す、勢いよく噴き出す・注ぐ | 流す速さを遅くする。高い所から落とし込まない |
| 空気が乾燥している(湿度が低い) | 加湿して湿度を上げる(物の表面に水分の膜ができ、電気が逃げやすくなる) |
| 合成繊維の衣服や、絶縁性の靴で作業する | 帯電を防ぐ作業服や靴を使う |
| かき混ぜる、ろ過する、ホースの中を流すなどの摩擦が多い | 作業の前に体や機器の静電気を除く(除電) |
物質の種類:単体・化合物・混合物
| 区分 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 単体 | 1種類の元素だけでできている純物質 | 酸素(O₂)、水素(H₂)、硫黄、鉄 |
| 化合物 | 2種類以上の元素が結びついた純物質。決まった組成を持つ | 水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、エタノール(C₂H₅OH) |
| 混合物 | 2種類以上の物質が混ざったもの。組成が一定とは限らない | 空気、海水、ガソリン、灯油 |
似た言葉に、同素体・同位体・異性体があります。どれも「何が同じで、何が違うか」で区別します。
| 用語 | 同じもの | 違うもの | 例 |
|---|---|---|---|
| 同素体 | 元素(同じ元素の単体) | 原子の並び方・結びつき方と性質 | 酸素とオゾン、ダイヤモンドと黒鉛、赤りんと黄りん |
| 同位体 | 原子番号(陽子の数) | 中性子の数(質量数) | 水素と重水素 |
| 異性体 | 分子式 | 構造(原子のつながり方や立体的な配置)と性質 | エタノールとジメチルエーテル(どちらも C₂H₆O) |
物質そのものが変わらない変化(状態変化・溶解など)を 物理変化、別の物質ができる変化(燃焼・鉄のさび・中和など)を 化学変化 といいます。「ドライアイスが気体になる」は物理変化、「木炭が燃えて二酸化炭素になる」は化学変化です。
化学反応式と物質量(モル)
物質量 は、粒子の数を「mol(モル)」という単位で表したものです。1 mol は約 6.0×10²³ 個の粒子の集まりです。1 mol の質量は、分子量(構成する原子の原子量の和)に g をつけた値になります。また、気体 1 mol の体積は、0℃・1気圧(1.013×10⁵ Pa)で約 22.4 L です。
化学反応式の係数は、反応する物質と生じる物質の 物質量の比 を表します。反応式の左右で、原子の種類と数が等しくなるように係数をつけます。
- 例題: メタン(CH₄)32 g を完全燃焼させるのに必要な酸素の質量と、0℃・1気圧での体積は?(原子量は C=12、H=1、O=16 とする)
- 反応式は CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O。メタン1 mol に酸素2 mol が反応します。
- メタンの分子量は 12 + 1×4 = 16。32 g は 32 ÷ 16 = 2 mol です。
- 必要な酸素は 2 × 2 = 4 mol。酸素の分子量は 32 なので、質量は 4 × 32 = 128 g、体積は 4 × 22.4 = 89.6 L です。
- 同じ式から、生じる二酸化炭素は 2 mol(2 × 44 = 88 g)、水は 4 mol(4 × 18 = 72 g)とわかります。
反応熱と反応の速さ
化学反応で出入りする熱を 反応熱 といいます。熱を出す反応が発熱反応、熱を吸収する反応が吸熱反応です。燃焼は発熱反応で、物質1 mol が完全燃焼するときに出る熱を燃焼熱といいます。たとえば燃焼熱が 890 kJ/mol の物質 2 mol が完全燃焼すれば、出る熱は 890 × 2 = 1,780 kJ です。反応の速さは、一般に温度が高いほど、濃度が高いほど、触媒(自分は変化せずに反応を速める物質)があるほど速くなります。
酸と塩基、酸化と還元
酸・塩基・中和・pH
| 酸 | 塩基 | |
|---|---|---|
| 水に溶けたとき | 水素イオン(H⁺)を出す | 水酸化物イオン(OH⁻)を出す |
| 例 | 塩酸(HCl)、硫酸(H₂SO₄)、酢酸(CH₃COOH) | 水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)₂) |
| pH(25℃) | 7より小さい(小さいほど酸性が強い) | 7より大きい(大きいほど塩基性が強い) |
pH が1小さくなると、水素イオンの濃度は10倍になります。pH 7 が中性です。
酸と塩基が反応して、互いの性質を打ち消し合うことを 中和 といい、水と塩(えん)ができます。例: HCl + NaOH → NaCl + H₂O。中和がちょうど終わるのは、酸が出す H⁺ の物質量と、塩基が出す OH⁻ の物質量が等しくなったときです。
- 例題: 0.10 mol/L の塩酸 100 mL を中和するのに必要な 0.20 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液は何 mL?
- 塩酸の H⁺ は 0.10 × 0.100 L = 0.010 mol。
- 必要な NaOH も 0.010 mol なので、0.010 ÷ 0.20 = 0.050 L = 50 mL です。
酸化と還元は同時に起こる
| 見かた | 酸化 | 還元 |
|---|---|---|
| 酸素 | 酸素と結びつく | 酸素を失う |
| 水素 | 水素を失う | 水素と結びつく |
| 電子 | 電子を失う | 電子を受け取る |
| 酸化数 | 増える | 減る |
たとえば CuO + H₂ → Cu + H₂O では、酸化銅(Ⅱ)は酸素を失って 還元 され、水素は酸素と結びついて 酸化 されています。このように、酸化と還元は1つの反応の中で同時に起こります。相手を酸化する物質を 酸化剤(自分は還元される)、相手を還元する物質を 還元剤(自分は酸化される)といいます。燃焼は、熱と光を出しながら進む激しい酸化反応です。第1類と第6類の危険物が「酸化性」(酸化性固体・酸化性液体)と呼ばれるのは、ほかの物質を酸化するはたらきが強いためです。
物理・化学で学んだ蒸気圧・熱・静電気・酸化の考え方は、燃焼のしくみや第4類の危険物の性質を理解する土台になります。次は燃焼と消火の記事と第4類の品名と性質の記事に進み、学習の進み具合は学習状況で確かめてください。
比熱と熱量、熱の移動、熱膨張、気体の法則を、計算つきの5択問題で確かめましょう。
化学反応式・物質量・反応熱の計算は、こちらの項目で練習できます。
この記事の項目で、問題を解く
よくある質問
- Q.比熱と熱容量は、どう違いますか。
- 比熱は物質1gの温度を1K上げるのに必要な熱量で、物質ごとに決まる値です。熱容量はその物体全体の温度を1K上げるのに必要な熱量で、「質量×比熱」で求めます。
- Q.静電気による火災を防ぐには、湿度を上げるのと下げるのとどちらがよいですか。
- 湿度を上げます。湿度が高いと物の表面に水分の膜ができ、静電気が逃げやすくなります。あわせて、接地(アース)と、液体を流す速さを遅くすることが基本の対策です。
- Q.気体の体積の計算で、温度はどの単位を使いますか。
- 絶対温度(K)を使います。セルシウス温度(℃)に273を足して直してから、ボイル・シャルルの法則に当てはめます。
まずは、今日の10問から。
乙4なびは、危険物取扱者試験(乙種第4類)の全33項目を、10問ずつ学べる学習アプリです。登録なしで、そのまま試せます。
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